目次 †
イスラム教 †
- 啓典主義。
- イスラム教の論理は明快。宗教学の基礎として最適。
- 神はアッラーただ一人。
- イスラム教にも予定説的なドグマはある。天命(カダル)である。全知全能のアッラーは、現世の人間の過去も未来もすべて決めてしまう。
- イスラム教の予定説は、現世限りの予定説である。現世で幸福になるか不幸になるかは、神がすでに決めてしまっている。しかし来世で天国へ行くか、地獄へ行くかは、現世でよいことをするか悪いことをするかに決まってしまう。つまり、因果律であり、この点は仏教と同じである。
- キリスト教は予定説のみであるので、大きく異なる。
- 地獄・極楽(緑園)が存在する。
- 『コーラン』には「よいことをせよ」と書いてある。
- よいことというのは、イスラム法(シャリーア)で決まっている。
- この点もキリスト教とは違う。キリスト教は信仰のみでよい。
- 偶像崇拝は死に値する罪。それでもなおアッラーの寛大さは失われない。
イスラム教の信仰 †
イスラム教の信仰とは、信心という内面的行動と、勤行【ごんぎょう】という外面的行動の両方が揃ってはじめて信仰たりうるのである。
六信 †
イスラム教では、何をどう信じるかが明快に特定されており、信仰は次の6つを信じることを指す。これを六信という。
- 神(アッラー)
- 天使(マラク)
- イスラム教の天使は神に仕える清浄な霊と規定されている。
- マホメットに神の啓示を告げた大天使ガブリエルを筆頭に、中天使・小天使などという具合に階級により地位が決められており、天使を信じることもイスラム教徒の義務である。
- 教典(キターブ)
- 神が大天使ガブリエルを介して人間に示した啓示である。
- 啓示の数は104である。
- 最も神聖とされるものは、最高啓典『コーラン』を筆頭に、モーセに与えられた『トーラー』(五書)、ダビデに与えられた『詩篇』、イエスに与えられた『福音書』の四書である。
- 預言者(ナビー)
- 神意を人間に伝えるために神が送った人のこと。
- 特に重要なのは、アダム、ノア、アブラハム、モーセ、イエスである。
- そして最大にして最後の預言者マホメット。この後はもう預言者は現れない。
- 来世(アーキラット)
- 最後の審判を受けた後に赴く緑園、ないし地獄のことである。
- どちらも行くのは魂ではなく生身の人間である。
- 天命(カダル)
- 「天地間のすべてのことは、神の意志による。例外はない」という命題を信じることである。
イスラム教の規範 †
イスラム教では勤行(修行)も明確に規定している。次の5つを守ることもイスラム教徒たる者の宗教的義務である。これを五行【ごぎょう】という。
- 信仰告白(シャハダ)
- 「アッラーの他に神なし。マホメットはその使徒である」と、絶えず口に出して唱えていることと決められている。
- 礼拝(サラート)
- 毎日5回、決まった時間にメッカの方向に向かい、礼拝しなければならない。
- 特に金曜日は神聖な日で、モスクに集い、公式に礼拝を行わなければならない。
- 断食(サウム)
- イスラム歴9月(ラマダン)に、1ヶ月断食をしなければならない。
- この期間は日の出から日没まで何も食べてはいけない、飲んでもいけない。
- 喜捨(ザカート)
- 貧しき人に恵む行為。
- 仏教にも喜捨はあるが、大きな違いは仏教の喜捨は義務ではないが、イスラム教の喜捨は宗教的義務である。
- 喜捨はするほうが偉くて、されるほうは偉くないということはない。双方ともいいことをしていることになる。
- 巡礼(ハッジ)
- イスラム歴12月に聖地メッカのカーバ神殿を中心に行われる儀式への参加である。
- 成人は一生のうち最低一度は行うべきとされているが、自発的義務であるので、十分な費用や体力、能力のない人にまで義務化しているわけではない。
- しかし可能な信者は地を這ってでも、何度でも参加する。自分でいけないときは、時分の友達や子孫に行かせる。金銭援助も惜しまない。
- そして巡礼を行った人はとても尊敬される。
- 巡礼の道中はイスラム教徒であれば敵も味方も関係なく、みな同胞となる。人種も社会的地位も無視される。ここに驚くべきほどの連帯(ソリダリテ)が生まれる。
参考文献 †