目次 †
コンデンサ †
コンデンサ(蓄電器)は、電気を蓄える素子として電気回路に多く用いられている。
電界コンデンサの概観
コンデンサがどのくらいのエネルギー量を充電できるかという能力のことを静電容量(略して容量)という。
コンデンサの特徴 †
- 電気を蓄えたり(充電)、放出したり(放電)する。
- 抵抗器と組み合わせて充放電時間を調節して、周期的な電圧変化を作り出すのに使われる。
- 交流(周期的に変化する電流)は通しやすく、直流(変化しない電流)は通しにくい性質がある。極端にいえば、直流電流は通さず、交流電流は通す。
- ちなみに、コンデンサのインピーダンスZは次のように計算される。
- 直流(DC)の場合はもちろん周波数f=0となる。よってZ=∞である。Zは抵抗のようなものなので、電流は流れないことになる。
- RF・パルスも流れる。そのため直流電源ライン上のノイズ(交流雑音)のみアースに通してしまうのに使われる。 ただし直流(DC)でも充電・放電の過渡時には電流が流れる。
- 抵抗器が抵抗値(Ω)を持つように、コンデンサには電気を蓄える容量値(F:ファラッド)がある。
- 直列接続の場合、同じ値のコンデンサを直列に接続すると、抵抗の場合とは逆に合成容量は元の1/2倍になる。電圧計の指針を上がり具合が早くなっていることがわかる。
- 一方、並列接続の場合、同じ値のコンデンサを並列に接続すると、抵抗の場合とは逆に合成容量は元の2倍になる。電圧計の指針を上がり具合が遅くなっていることがわかる。
- 以上のことをまとめると次のようになる。
- 抵抗の合成公式と静電容量の合成公式はまったく逆になる。
- コンデンサは低い周波数の交流を通しにくく、高い周波数の交流を通しやすいということがわかる。言い換えると、いろいろな成分からなる信号の中から高い周波数の成分だけを取り出したいというときにはコンデンサを使えばよい。
- コンデンサの耐電圧とは短時間なら耐えられる最高電圧のことである。コンデンサの絶縁物の材料と電極の間隔によって決まる。
- JISでは抵抗器と同じように標準数に基づく容量がE3系列とE6系列の数列のものが作られている。
- コンデンサの容量の精度は抵抗ほど高くなく、設計上の許容差も比較大きいため、余り細かい刻みで容量の違うものを作っても意味がないからである。
- E3系列の許容誤差は40%、E6系列の許容誤差は20%である。
- 電解コンデンサのセパレータとして土佐和紙が使われている。
コンデンサの働き †
コンデンサは2つの薄い金属板の間に電気を通さない物質(絶縁体)を挟んだ構造になっている。
このコンデンサに電圧を加えると、プラス側の導電板に電気(電荷)が充電される。充電され続けると電流は小さくなり、静電容量いっぱいになると電流は止まってしまう。この状態では一度電気を切ってもそのまま充電されたままの状態になっている。今度は端子をショートさせると、蓄えられた分だけ電気(電荷)は一気に放電する。
どの程度電気を蓄えるかは、その絶縁体の誘電率という性質によって決定する。真空の誘電率を1とすると水の誘電率は78.3になる。普通のコンデンサに使われている絶縁紙の誘電率は1.2から3.5ぐらいである。
[法則]コンデンサの静電容量
2つの電荷Q1とQ2がdの距離を隔てているとき、その間に働く力Fは次のように表されます。

ただしεは誘電率である。
[考察]真空中ではε=1であるから力はそのままであるが、水の中では力は約1/80に減る。
コンデンサの表記の見方 †
コンデンサの単位はF(ファラッド)だが、これだと容量が大きすぎるので、通常はμF(マイクロファラッド)、pF(ピコファラッド)単位が使われる。
- 1F=1,000,000μF
- 1μF=1,000,000pF
コンデンサのパーツ自身に101などの3桁の数字が表記されている。上位2桁は下位1桁の0の数を付け加えた数字でpFを表す。
例:473と表記されていたら、473×103=47000pF=0.047μFである。
容量性リアクタンス †
コンデンサに直流を繋いだ場合は充電が終わると電流は流れなくなる。どのくらいの電気を蓄えられるか、その能力を示す値をキャパシタンス(静電容量)という。記号はC、単位はF(ファラッド)で表す。これはコイルの場合のインダクタンスに相当する。
それでは交流を繋いだ場合はどうなるだろうか。交流は常に方向が変わる。つまりコンデンサには常に充電電流が流れると考えることができる。しかしその場合でも、充電電流は交流の方向が変わった瞬間が最大で次第に減ってくるので、まったく自由に流れるというわけではなくある程度妨げられている。このときコンデンサが交流に対して示す抵抗を容量性リアクタンスという。記号はXC、単位はΩで表す。この容量性リアクタンスXCは、次の式で求めることができる。
[法則]コンデンサの容量性リアクタンス

ただしfは周波数。
この式から、周波数fやキャパシタンスCが大きいほど、容量性リアクタンスXCは小さくなることがわかる。つまりコンデンサは静電容量(C)が大きいほど、交流をよく通すことになる。
コイルのリアクタンスとコンデンサのリアクタンスの比較 †
コイル/コンデンサのリアクタンスと直流/交流は次のような関係になる。
| コンデンサ | コイル |
直流 | 流れない | 自由に流れる |
交流 | 流れやすい | 流れにくい |
またコイル/コンデンサのリアクタンスと周波数は次のような関係になる。
- コイルのリアクタンスXLは、周波数に比例。
- コンデンサのリアクタンスXCは、周波数に反比例。
コンデンサのインピーダンス †
コンデンサに電荷を蓄えるためには電流を流す。電流というのは電荷の流れのことであるから、電流が流れた分だけ電荷が溜まっていく。そもそも電流Iというのは、電荷Qが変化した量、正確にはQの時間変化量である。時間変化量とは数学では時間tで微分した量なので、次のように表される。
←(1)
コンデンサの関係式「Q=CV」の両辺をtで微分すると、静電容量Cは定数なので次のようになる。
←(2)
(2)と(1)を比較すると次のようになる。
←(3)
このコンデンサに交流の電圧vを加える。このとき流れる電流をiとして、この2つの関係を考えてみる。
加える交流電圧vをv=v0ejωtとして、(3)に代入すると次のようになる。
←(4)
ここで、Z=v/iという量を考える。このZ、即ち電圧を電流で割ったものであるから、直流回路のオームの法則の場合では抵抗Rのことである。しかし今は交流電圧・電流を考えているので、厳密には抵抗ではなく抵抗のようなものといえる。これをインピーダンスという。つまりインピーダンスは交流回路での抵抗のようなものである。
コンデンサの場合のインピーダンスZcを考えてみる。(4)を使うと、Zcは次のようになる。

最後の結論の部分を見てみると、振幅v0や時間tは消えて、各周波数ωと静電容量Cだけの式になる。
固定容量コンデンサの種類 †
固定容量型コンデンサ(固定コンデンサ)を大きく分類すると、極性のあるものと無極性のものに分けられる。
- 極性のコンデンサは接続する端子がプラスとマイナスに決まっていて、これを逆に接続するとコンデンサが壊れたり、回路が破損することがある。
- 無極性のコンデンサはどちらに接続しても構わない。
固定容量コンデンサ †
電解コンデンサ(ケミコン) †
- 極性がある。
- 電解液の中にアルミニウム箔を入れて、電流を流すと酸化膜ができる。これを絶縁体にしたコンデンサのこと。
- 酸化膜はそのままではなくなってしまうので、電解液を染み込ませた紙を入れている。
- 酸化膜を作る時に加えた直流電圧の+、−に合わせて電圧を加えないと壊れてしまう。
- マイナス側には帯が入っている。
- 容量が大きいが、漏れ電流が大きい。
- 電解物質を密封してあるが、長い時間が経過すると、密封のために使われている材料の分子間の隙間を通じて徐々に電解物質が揮発していく。
- その揮発量は一般にそのコンデンサの周囲の温度が10℃高くなると2倍になり、寿命が半分になるといわれている。
- 国産の高級電解コンデンサでさえ設計寿命は40℃で15年である。つまり、50℃で使うと7年半、60℃で使うと3年半強ということになる。
タンタル・コンデンサ †
セラミックコンデンサ †
- 極性がない。
- 酸化チタンなどのセラミックを絶縁体に使ったもの。
- フィルムコンデンサはくるくるに巻かれた構造なので、コイルの性質(インダクタンス)が少し残ってしまう。であるから、高い周波数の交流は少し通りにくい。一方、セラミックコンデンサはそのようなことはない。
- 主に高周波に使われる。
- 小型で小容量から比較的大きな容量のものまであるので、電子工作にはよく使われる。
ペーパー(紙)コンデンサ †
- 極性がない。
- 紙の間に薄いアルミニウム箔を入れて巻き、真空釜に入れて空気や水分を抜き取り、ワックス(ロウ)やオイル(油)を染み込ませたもの。
フィルムコンデンサ †
- 極性がない。
- 絶縁物として、ポリスチロールやポリエチレンのフィルムを使ったもの。
- フィルムは厚さが薄くて平らなものができるので、容量の精度がよいものが作れる。
- また、水分を吸わないので経年変化に強い。
- 絶縁物の違いでそれぞれスチロールコンデンサ(スチコン)、マイラーコンデンサなどと呼ばれる。
- マイラーコンデンサは温度特性がよい。
- そして、スチロールコンデンサは容量誤差が非常に小さい。
マイカコンデンサ †
- 極性がない。
- マイカ(雲母)板を誘導体に使ったもの。
- マイカは決めた大きさに切り交互に重ねられ、上下から締め付けられて作られる。詰めつけられて空気や水分を追い出し、フェノールレジン(バークライト)などで覆う。
- 経年変化が少なく、安定性に優れている。
カップリングコンデンサ †
- トランジスタは直流の電流をバイアス電流として使い、目的の交流信号を増幅するが、増幅された直流がそのまま次のトランジスタへ交流信号と一緒に流れていくと、回路の動作が不安定になる。従って、交流は通すが直流は通さないコンデンサの性質を使って、不要な直流をカットして次のトランジスタに繋げていく。
チップ型積層セラミックコンデンサ †
- チップ抵抗に対応するチップコンデンサ。
- 容量は多様(数pF〜数μF程度)。
- チップ抵抗同様に自動機械による取り付けが前提の工場で量産される製品向け。
- 外観がチップ抵抗とよく似ており、見分けるためにオレンジ色や茶色に塗られている。
容量可変型コンデンサ(バリコン) †
- 主にラジオの同調回路に使用される。
- よく使われているポリバリコンは、誘電体にポリエチレン系のフィルムを使用したもので小型のラジオに用いられます。
トリマコンデンサ †
- 周波数の微調整などのために使われる半固定の可変容量コンデンサである。
- プリント基板への直付け型の形になっている。
- 容量を調整するネジを回すときは、セラミック精密ドライバを使う。
- 金属製のドライバは絶対に使用してはいけない。
- 手元にセラミック精密ドライバがない場合は、竹串・つまようし・マッチの軸などの伝導性のない素材を削って、代用品を作ればよい。
- 一般の金属製のドライバで回すと、ドライバの金属で容量が変わってしまうため、調整が難しい。トリマーコンデンサの調整には、金属を使っていない調整用ドライバを使う。
- トリマコンデンサは本来2個の端子だが、大型になると固定用の足のある3本足のものもある。しっかり固定して取り付けないと、振動などで容量が変化してしまい、せっかくの調整も意味がなくなってしまう。
コンデンサの特性 †
定格電圧(耐圧) †
- コンデンサには定格電圧(耐圧)といって、安全に使える電圧が定められている。
- 利用可能な電圧範囲のこと。
- コンデンサの2本の足の両端の電圧の差が定格電圧を越えてしまうと、絶縁破壊を起こし、コンデンサの種類によっては白い煙を噴出して二度と使えなくなってしまう。
- 電解コンデンサは構造上極性があり、逆方向に電圧を加えると、定格電圧よりもずっと低い電圧であっても絶縁破壊を起こす。大音量と共にコンデンサが破裂して破片が飛び散ることもあり大変危険である。
- 電解コンデンサにはWV(ワーキング・ボルテージ)という表示がされている。
- 製品ごとに6.3、16、25、50、125Vといった値が決められている。
- 同じ静電容量値のものであっても耐圧が違えば、形状や大きさが違ってくる。
- コンデンサは耐圧以下で使わないと、発熱して破壊してしまう。
- 特に耐圧に注意しなければならないのは、電流回路に使う場合である。電源部は少し大きめの耐圧のコンデンサを選んだ方が無難である。
容量温度係数 †
- 周囲温度1℃の変化で、コンデンサの容量がどれだけ変化するかを示す数値が容量温度係数である。
- 一般的に1[ppm/℃]を単位に表します。
- 例:ポリスチレンの場合、-150[ppm/℃]なので、1[℃]の上昇につき容量は0.015[%]減少することになる。
漏れ電流と絶縁抵抗 †
- コンデンサに定格電圧をかけたとき、誘電体を通して流れてしまうわずかな電流を漏れ電流という。
- 漏れ電流が加えた電圧に比例する範囲内では、電極間の絶縁抵抗という形で表すことができる。
誘導正接 †
- 一般にタンデルタ(tanδ)と呼ばれる特性である。
- コンデンサに交流電流を流すとき、理想のコンデンサなら損失0、即ち実効抵抗成分0になるはずだが、実際は多少の損失が発生する。そのとき、このコンデンサが交流に対して示す抵抗(リアクタンスという)と、その損失抵抗の比を誘電正接と呼ぶ。
コンデンサの過渡状態 †
抵抗RとコンデンサCを直流電源Eに接続した回路を考える。
この回路において、時刻t=0でスイッチSを閉じたとき、コンデンサCにかかる端子電圧vCの時間変化の様子を調べる。
抵抗Rにかかる端子電圧は、次の通りである。

回路に流れる電流は、次の通りである。

よって、この回路の回路方程式は次のように計算できる。



←(*)
微分方程式(*)の解は、左辺をE=0としたとき(同次方程式という)の解
とE≠0としたき(非同次方程式という)の解
の和で与えられるので、次の式となる。
←(**)
電気回路では、
は過渡状態の解を表すために過渡解と呼ばれ、
は定常状態の解を表すために定常解と呼ぶ。
[1]定常解を求める。
(∵定常状態ではコンデンサCの性質から、回路に電流が流れない。つまり、
)
[2]過渡解を求める。
過渡解は次の式で与えられる。



(∵両辺を積分する)
(∵
、k1,k2,k3:積分定数)
})

(A:積分定数) ←(***)
よって、(**)より、vcは次のように計算できる。
(∵(**))
(∵(*),(***)) ←(****)
ただし、この式には値の定まっていない積分定数Aが含まれており、完全に融けたわけではない。
[3]初期条件を考慮して、積分定数の値を決める。
初期条件とは、スイッチを閉じて回路に変化が起こる前のvCの状態のことである。
今回はvCを求めるので、これが初期条件となる。
iを求める場合には、i=0のときのiの値が初期条件になる。
(∵(****))
(∵t=0,vC=0)



よって、微分方程式の解は、次のようになる。
(∵(****))
)
これをグラフに表すと、電圧vCの時間変化は次のようになる。
コンデンサの充放電 †
バーチャル電子ブロック利用によるコンデンサの蓄電作用 †
回路内のスイッチをONにすると電流が流れて、コンデンサの電圧が徐々に上昇して、約5Vになる。スイッチをOFFにしても電圧はそのままである。これをコンデンサの蓄電作用と呼び、コンデンサはこのように電気を一時的に蓄えるために用いる。
電子ブロックminiによる1石ワンショット回路 †
ブロック配置図
- コンデンサの充放電を利用する。
- リード線を差して、メインスイッチをオンにする。リード線の端子を一瞬接続させ、すぐに離すとLEDが明るく付いて一定時間後消える。
- ブロック配置図の赤色のコンデンサブロックを47μFから10μFに変更すると、点灯時間が短くなる。
回路図
- リード線を接触させると、トランジスタがONにすると同時にLEDが点灯する。
- リード線を離すと、4.7KΩの抵抗を通してコンデンサに充電が始まり、充電が進むとベース電圧が下がりLEDが消灯する。
- つまり、トランジスタ1石で、単安定マルチ回路と同様の働きを得られる。
参考文献 †
- 『実践量子化学入門』(講談社ブルーバックス)
- 『ビギナーズ・トランジスター読本』
- 『電子工作ハンドブック1 工作・部品 入門編』
- 『誰にでも手軽にできる電子工作入門』
- 『図解雑学 電子回路』
- 『ゼロから学ぶ電子回路』
- 『初級アマチュア無線 問題と解説』
- 『はじめて学ぶ手ほどきデジタル回路』
- 『たのしくできるやさしいアナログ回路の実験』
- 『まるごと覚える4級アマチュア無線 ポイントレッスン』
- 『ズバリ出る4級アマチュア無線問題集 '92〜'93』
- 『DIGITAL TC TRAINER MODEL CT-312 デジタルIC実験セット・ガイドブック』
- 『ELEKIT入門+実用キットではじめる電子工作キット活用術』
- 『組み込みソフトウェアエンジニアのためのハードウェア入門』
- 『大人の科学magazine Vol.32』
- 『図解 はじめて学ぶ電気回路』