この波動関数ψをxに関して微分する。
次に両辺にを掛けて、運動量を表す
を使って、整理すると次の関係式が成り立つ。
この式の意味は、波動関数Ψにという演算を行うと、右辺のように運動量pと波動関数の掛け算になるということである。そこでこれを運動量を求める演算という意味で運動量演算子と呼ぶ。
この関係式の両辺をxに関して微分すると、左辺は次のようになる。
これをxの2階微分を左辺に持っていき、整理すると次のようになる。
←
一方、運動エネルギーTは次のように表される。
の関係を使うと、次のように書ける。
左辺をk2にして、整理すると次のようになる。
これを式,紡綟すると、次のようになる。
まとめると次のようになる。
これは波動関数Ψにという演算を行うと、運動エネルギーと波動関数の掛け算になることを意味する。
全エネルギーEは位置エネルギーVと運動エネルギーTの和である。よってE=T+Vが成り立つ。これを使って、式を書き換えると次のようになる。
これに波動関数を代入すると、次のようになる。
この式には時間に関する微分はないので、波動関数の中のe-iωtの項を次のようにxの微分から分離できる。
よって、次を解けばよいことになる。
ここで時間を含まない波動関数をφと置くと、次のようになる。
この式の左辺の第1項は運動エネルギーに、第2項は位置エネルギーに、右辺は全エネルギーに対応しているとイメージすると覚えられるだろう。
この式には時間が入っていないので、時間に依存しないシュレーディンガー方程式と呼ばれる。
この式の右辺はエネルギーEにφを掛けたものである。つまり、エネルギーを求める演算子はということになる。この演算子はハミルトニアンと呼ばれ、Hで表される。
また、シュレーディンガー方程式を解いて求められる波動関数を固有関数と呼ぶ。エネルギーEはエネルギー固有値と呼ばれる。
電子の入るポテンシャル(位置エネルギーの分布の形)として井戸の形をしている、井戸形ポテンシャルというものを考える。シュレーディンガー方程式では単にVと置いていたが、ポテンシャルエネルギーの大きさは場所xによって異なるので、ポテンシャルエネルギーはxの関数としてV(x)と書く。ポテンシャルV(x)は次のような式になる。
電子は小さいので重力はあまり重要なのではなく、電荷を持っているのでクーロン力(電気的な力)のほうが大きく働く。電子のエネルギーが上方向になっているので、もしプラスの電荷で考えるなら上に行くほどエネルギーが小さいということになる。
ここで量子井戸が無限に深い、即ちEB=∞として考える。仮に壁の高さが無限でなければ、壁の中に電子の波が進入してしまう。これをトンネル効果と呼ぶ。とりあえずここでは量子井戸が無限に深いとすると、電子が壁の中に進入しないので、井戸の中だけに存在するようになる。電子の波は左右の壁に阻まれ、仮にぶつかっても跳ね返り、結局井戸の中に閉じ込められる。この場合、井戸の中に安定に存在する波は定在波と呼ばれる。
無限に深い量子井戸中で安定に存在する一番波長の長い波動関数は、波長の半分の長さが井戸幅Lに等しいものになる。その次にエネルギーの高い波は、波長λが井戸幅Lに等しいものである。同様に、あるエネルギーの定在波の波長をλnとすると、次の関係が成り立つ電子の波が解となる。
(nは正の整数)
よって、井戸の中の波動関数は、次のようにサイン波で表される。
Aは振幅で、規格化条件を満たすように決める。規格化条件を満たすので、次が成り立つ。ただし、量子井戸のxの範囲は-∞〜+∞ではなく、0〜Lで考えれば十分なのでこうなる。
ではこの規格化条件を満たす係数Aを求めてみる。
よって、より、振幅Aが求められる。
ゆえに、規格化された波動関数は次のようになる。
(nは正の整数)
ついでに定在波が成り立つときの電子のエネルギーも求めてしまおう。定在波なので時間に依存しないシュレーディンガー方程式に、上記の波動関数Ψnを代入すれば、エネルギーが求まる。
量子井戸の中では、ポテンシャルV=0とおいたので、運動エネルギーの項のみが残る。よって、次のようになる。
一番下(n=1)の定在波のエネルギーをE1とすると、次が成り立つ。
よって、次が成り立つ。
n2となっているので、2番目(n=2)の定在波のエネルギーはその4倍、3番目(n=3)の定在波のエネルギーはその9倍、…となる。このときエネルギーは飛び飛びの値を取り、量子化される。これらの定在波の条件が成立し、電子が安定に存在するエネルギーをエネルギー準位という。特に一番エネルギーが低い準位は、一番底にあるので基底準位と呼ばれる。またnの値によって異なる量子状態を表すので、このnを量子数と呼ぶ。
まず波動関数を時間tで微分する。
これの両辺にを掛けて、
を使って整理すると、次のようになる。
そして、より、次が成り立つ。
この式は時間に依存するシュレーディンガー方程式と呼ばれる。もちろん時間に依存しないタイプより、一般的なので適用範囲は広い。
[補講]大学で量子論を学ぶ必要があるなら、時間に依存しないシュレーディンガー方程式と時間に依存するシュレーディンガー方程式の両方とも暗記する必要があるだろう。
運動量演算子と運動量において、次の関係が成り立つことはすでに見た。
この式を使って運動量を求めるには、波動関数Ψの複素共役Ψ*を左から掛けて、その積分をとればよい。
右辺のpはと一致し、これは数値である。エイチバーと波数は両方とも数値だから。よってpは積分の外に出せて、次が成り立つ。
右辺のΨ*Ψは、ある場所xに電子が存在する確率(存在確率という)を表すとボルンによって理解された。x座標の-∞から+∞までのすべての存在確率を足せば、100%=電子1個になるので、次が成り立つ。
これを波動関数の規格化条件と呼ぶ。よって、次が成り立つ。
運動量演算子を複素共役の波動関数で挟んで積分を取ると、その物理量である運動量pを求められた。このようにして得られる物理量を期待値と呼ぶ。
また同様に、エネルギーの期待値を求めるときもハミルトニアンを複素共役の波動関数で挟んで積分を取ればよい。
右辺は次のように変形できる。
以降演算子のときはハットをつけることにする。
例:pは単に運動量の値を表し、は運動量演算子を表す。
粒子である電子を波として扱うと、計算ができる。計算して何がわかるのかというと、電子の波の形を決定することができる。さらに、その波の形を2乗すると、電子の存在する確率分布になる。
電子の存在する確率分分布とは、ある場所に電子がいる確率がどれくらいあるということわからないということである。これを考えたのはボルンであり、このような考え方を確率解釈という。この考え方で実験結果を予測すると、実験事実とよく一致することになる。ただし、この確率解釈は電子の位置や速度などを観測するときにだけ使う。観測しないときに、原子中の電子がどうであるかを想像したり、予測したりするものではない。
運動量pを求める積分の式は次のように表されることはすでにやった。
しかしこれを書くのは大変なので、ディラックによるブランケット表示というものがよく使われる。
このように真中に演算子を置いて、右側に演算される波動関数、左側にその演算結果にかける波動関数を書く。