目次 †
法令の基本 †
- 新法優先の原則
- 新法は旧法に優先し、同一の事項については新法の規定が適用されるという原則がある。新しい法律は一般に古い法律に比べると厳しい内容を持つものが多いので、厳しい規制の適用を受けることが多くなる。消防法はほとんど毎年改正され、そのたびに段々と厳しくなっている。
- 法律不遡及【ふそきゅう】の原則
- 法律が制定されると一定の期間(半年が多い)を置いて施行になる。法律施行前に犯したその法律の違法行為は問われることがなく無罪であるが、施行後はそうはいかない。法律の効力は法律施行前に遡って及ばないというのが、法律不遡及の原則である。
- 特別法優先の原則
- 法律には一般の場合に適用される一般法と、特別の場合に適用される特別法とがある。
- 特別法は一般法に優先することになっているので、特別法である消防法の規定は他の一般法である法律よりずっと強く、優先して適用される。
- 以上、以下、越える、未満
- 消防法の中にはこの4つの言葉が入り乱れて出てくる。
- 「以上」の否定は「以下」ではなく、「未満」になる。また、「以下」の否定は「以上」ではなく、「超える」になる。
- 許可と届出
- 本来禁止されている事項について、特別の場合にこれを解除することを「許可」という。我が国の法律には、この許可の制度がたくさんある。
危険物の貯蔵・取扱い †
原則 †
・消防法第10条1項は、「指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所でこれを貯蔵し、または製造所等以上の場所でこれを取り扱ってはならない」と定めている。
[補講]オイルショックのとき、売り惜しみや買いだめなどの問題が起こったが、これを禁止する法律がなく野放し状態であった。そこで、この第10条1項を適用して、石油類を山の中に隠している悪徳商人を摘発したことがあった。
・消防法でいう貯蔵所や取扱所という施設は、鉄筋コンクリートなどで造られなければならず、安全のため必要な設備を有し、市町村長の許可をもらっていなければならない。
例外 †
・第10条1項には、「ただし、所轄消防長または消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、10日以内の期間、仮に貯蔵し、取り扱う場合はこの限りでない」という但し書きがある。ある条件下では仮に貯蔵することが認められる。これを仮貯蔵と呼ぶ。
・危険物を船で輸入して危険物貯蔵所に貯蔵してから色々と使用する場合、岸壁の倉庫に一時(短期間)荷揚げをしてから危険物運搬車で逐次運ぶことになるが、運搬する自動車や危険物貯蔵所は当然消防法の適用を受ける設備などであることが必要であるが、岸壁の倉庫にまで厳しい規制をかけるのも酷なので、一定条件の下で仮貯蔵することができるようにしたものである。
・ここで注意を要する点は、次の2点である。
- 所轄消防長、署長の承認がいること
- 専門家の目から見てあまり危険性の高いものである場合は承認を与えないことによってチェックをする。
- 10日以内の期間であること
・消防長とは、署長の上にいる人物のこと。
・似ているものとして仮使用があるが、混同しないように。
指定数量 †
指定数量とは、消防法第9条の3において危険物についてその危険性を勘案して政令別表第3で定める数量である。
危険性の高い危険物については、指定数量は少なく、危険性の比較的少ない危険物については指定数量を多くするというように合理的な方法で定められている。
品名 | 性質 | 危険等級 | 指定数量(l) |
特殊引火物 | | I | 50 |
第1石油類 | 非水溶性液体 | II | 200 |
水溶性液体 | II | 400 |
アルコール類 | | II | 400 |
第2石油類 | 非水溶性液体 | III | 1,000 |
水溶性液体 | III | 2,000 |
第3石油類 | 非水溶性液体 | III | 2,000 |
水溶性液体 | III | 4,000 |
第4石油類 | | III | 6,000 |
動植物油類 | | III | 10,000 |
指定数量の倍数計算は次のようにする。
倍数=(Aの貯蔵量/Aの指定数量)+(Bの貯蔵量/Bの指定数量)+…
指定数量と規制法規 †
指定数量の0倍〜1/5未満 | 規制なし |
指定数量の1/5以上〜指定数量未満 | 市町村条例 |
指定数量以上 | 消防法 |
・製造所などを設置しようとする者は、市町村長等の許可を得なければならない。
・消防法令に違反すると、懲役刑または罰金刑を受けることがある。
・指定数量以上の危険物を許可または承認を受けずに貯蔵すると、市町村長等からその危険物の除去を命ぜられることがある。
・指定数量未満の危険物の場合は、市町村条例により規制を受け、一般に少量危険物貯蔵取扱所と呼ばれる。わら製品、木毛その他の指定可燃物と同様の扱いとなる。
運搬については、指定数量に関係なく消防法により運搬方法、容器などを規制している。
[補講]航空機、船舶、鉄道または軌道による危険物の貯蔵、取扱いまたは運搬については、消防法の危険物の規定は適用されない。
指定数量以上の貯蔵(消防法における貯蔵) †
・SRC鉄筋コンクリートなどで造られ、安全設備を有し、市町村長の許可を得た貯蔵以外は違法となる。
造所等 †
原則 †
・消防法第11条には、「製造所、貯蔵所または取扱所を設置しようとする者は、次の各号に定める者の許可を受けなければならない」と記載されている。
・条文はもっと長文であるが、ここでいう「」製造所、貯蔵所または取扱所」のことを一括して「製造所等」と呼んでいる。
市町村長等 †
・11条1号では、許可権者として次の2種類を挙げている。
- 消防本部および消防署を置く市町村の区域の製造所等
- 消防本部等所在市町村以外の市町村の区域の製造所等
つまり、新築・改築時の許可権者は、原則として市町村長だが、消防本部や消防署を持っていない市町村長にはこの許可権限がなく、代わって都道府県知事がそれを行うことになる。
・さらに、移送取扱所というパイプラインについては自治大臣が許可権者になる場合もあり、これら3者を一括して市町村長等と言っている。移送取扱所についての許可権限者は、この説明のように市町村長と知事とになるが、パイプラインというものは大変長いもの(大きなコンビナートではよその県にまたがるのもある)である。そこで、この規模ごとの許可権限者を決める必要がある。
- 消防本部および消防署を設置している市町村の区域内だけの移送取扱所
- 2つ以上の市町村の区域にまたがる移送取扱所
- 2以上の都道府県の区域にまがらる移送取扱所
知事、市町村長、署長 †
次の対応だけを要領よく覚えればよい。
完成検査 †
原則 †
・第11条5項には、「第1項の許可を受けた者は、製造所等を設置したときまたは変更したときは市町村長等が行う完成検査を受け、これらが技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない」と定められている。
これは、製造所等の工事が完成したからといってすぐに使用できるのではなく、完成検査に合格しなければ使用できないということである。
・条文自体は簡単なようだが、試験においては次のように、完成に至るまでの流れが文章で出題されるので、この流れを用語とともに正確に覚えなければならない。
仮使用 †
・この第11条5項にはただし書きが付いている。
「ただし、製造所等の位置、構造、または設備を変更する場合、この製造所等の変更工事にかかわる部分以外の部分について市町村長等の承認を受けたときは、完成検査を受ける前においても仮に使用することができる」というものである。
・つまり、製造所等の増築の場合、本来変更工事にかかわらない部分も操業を休業しなければならないが、市町村長等の承認があれば操業を停止しなくてもよいのです。
厳重な完成検査 †
・第11条の2に定められた「特定事項の検査」ということで、普通は完成検査前検査と呼ばれている。
・11条の2は、「特定の製造所等の設置またはその位置、構造、設備を変更する許可を受けた者は、元来の完成検査前に特定の事項について、工事の工程ごとに市町村長等が行う検査を受けなければならない」という主旨がある。
・液体危険物タンクとは、屋外タンクや岩盤タンク、特殊液体危険物タンクで、液体危険物を貯蔵したものである。
・特定の事項とは、次の3つの事項が政令8条の2に定めれている。
- 液体危険物タンクの基礎および地盤に関する事項
- 液体危険物タンクの洩れおよび変更に関する事項
- 液体危険物タンクの溶接部に関する事項
技術上の基準 †
・第10条の1項は危険物取扱いの原則を定めた非常に重要な条文である。
・他の3項、4項も重要と言える。
・10条3項は、「製造所等においてする危険物の貯蔵または取扱いは、政令で定める技術上の基準にしたがっていなければならない」となっている。ここで重要なのは、「危険物を取り扱う方法」(ソフト)ということである。
・10条4項は、「製造所等の位置、構造、設備の技術上の基準は政令でこれを定める」となっている。ここで重要なのは、「危険物を取り扱う設備」(ハード)ということである。
[補講]ハードのほうは一旦作ってしまうとそんなに変わるべきものでない。ソフトのほうは多少の変更があるかもしれないが、この基準の枠内に納まるべしということもあり、ハードのほうは1cmでも基準からの変更は許さないということである。
・11条4には、「製造所等の設備等を変更しないで、取り扱う危険物の種類または数量を変更しようとする者は、その日の10日前までに市町村長等に届出なければならない」となっていて、「ハード」の変更は新規に許可申請がいるのに対して、ソフトのほうは届出でよいことになっている。
・12条は、「製造所等の所有者、管理者、占有者は、製造所等の位置、構造、設備が技術上の基準に適合するように維持しなければならない」となっている。「ハード」は、許可を受けたときの形のままにしておいて、勝手に手を加えて変更することは違法行為であることを明示してあるのである。
使用停止等の処分 †
技術上の基準に従う命令 †
取扱い方法について †
・第11条の5には、「市町村長等は製造所等においてする危険物の取扱いが技術上の基準に従っていないと認めるときは、この製造所等の所有者、管理者、占有者に対し、技術上の基準に従って取り扱うべきことを命ずることができる」として、法令に従った取扱いをするように勧告命令を出す。
・実際には命令を受けた者は、どうのような措置をしたかを後で報告書を提出することになる。
施設について †
・第12条2項には、「市町村長等は、製造所等の位置、構造、設備が技術上の基準に適合していないと認めるときは、所有者、管理者、占有者で権原を有する者に対し、これらを修理し、改造し、又は移転すべきことを命ずることができる」となっている。
・権原とは、権限と同じ意味と考えてよいが、公の立場ではなく、私人の立場の権限と解されている。消防法以外の法律でも使用されている用語である。
・危険物の取扱い、施設の法律違反と改善命令を受ける者の違いは次のようになる。
所有者・管理者・占有者 | 取扱方法について命令を受ける |
所有者・管理者・占有者で権原を有する者 | 耐火構造設備について命令を受ける |
使用停止命令 †
・この処分がもっとも重いものであるが、消防法第12条の2にそれを規定している。
・利用停止処分は次の場面で行われる。
〔亀可の設備などの変更
完成検査なしで使用
取扱いについて技術上の基準に従う命令を聞かない
せ楡澆砲弔い撞蚕兢紊隆霆爐謀合すべき命令を聞かない
ゴ躙永保安統括管理者を定めていない
κ眛餞篤勅圓鯆蠅瓩討い覆
保安検査を受けない
定期検査をしない
・ 銑い楼柄阿らある規定だが、逐次追加されてこのように増えていった。
危険物取扱者 †
危険物取扱者免状 †
・免状の体裁は、1枚の大きな紙ではなく、免許証のようにポケットに入る表紙付きのもの。
免状の種類 †
・甲種、乙種、丙種の3種類がある。
・この違いは第13条の2第1項によって定められている。
「危険物取扱者が取り扱うことのできる危険物、及び甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者がその取扱作業に関し立ち会うことのできる危険物の種類は、自治省令で定める」
・免状と取り扱える内容は次のようになっている。
- 甲種
- 乙種
- 丙種
- 第4類の危険物のうち、ガソリン、灯油、軽油、重油、潤滑油、引火点130℃以上の第3石油類、第4石油類、動植物油類だけ
立ち会い †
・甲種取扱者と乙種取扱者には、立ち会いという行為ができることが定められている。
・立ち合いとは次の2点である。
- 危険物取扱者以外の者が、取扱作業をする場合にすぐそばにいてその者が技術上の基準を守るように監督すること。
- 取扱者以外の者が作業をしている場合必要に応じて適切な指示を与えること。
例:ガソリンスタンドで車にガソリンを入れる作業のときは、免状所持者が目を光らせていなければならない。もしくは、免状所持者が作業をしなければならない。
保安監督者 †
・普通の危険物を取り扱っているところより危険度の高い危険物施設では、「危険物保安監督者」が必要である。
免状の交付 †
・免状については都道府県知事がその事務などを行うが、本来はまず第一に都道府県知事は試験を行わなければならない。
・試験を行った結果、合格者と不合格者に分ける。
・合格者か不合格者かは、やはり知事が発表することによってわかるが、免状は合格者に対して自動的に交付されるのではなく、合格者が改めて申請をしなければ交付はしない。
・他の資格試験はほとんど、合格するとしばらくして免状が送られてくるが、危険物取扱者の試験はこのように厳重に行われるのである。
危険物取扱者が果たさなければならないこと †
技術上の基準の遵守【じゅんしゅ】 †
・危険物取扱者が仕事をするのに当たっては、「取扱作業に従事するときは法令で定める危険物の貯蔵、取扱いの技術上の基準を遵守し、当該危険物の保安の確保について細心の注意を払わなければならない」(政令31条)と、技術上の基準に従った作業をすることが義務付けられている。
・この技術上の基準の内容は、「火災予防および消火の方法」、「危険物の類ごとの共通する性質」をベースにした取扱いの規準である。
立ち会い †
・「立ち会いをするとき、取扱作業に従事する者が危険物の貯蔵、取扱の技術上の基準を遵守するよう監督するとともに、必要に応じてこれらの者に指示を与えなければならない」(政令31条)という項があり、立ち会い作業について、危険物取扱者が果たさなければならないことについての定めがある。指示を与えるために立ち会うのだから、すぐそばにいて、基準を守って安全な作業をするように監督する必要があるということである。
・この立ち会いは丙種の取扱者にはできない。
保安講習 †
・「危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者は、都道府県知事が行う保安に関する補習を3年に1回受講しなければならない」
免状に関する諸手続き †
・資格試験には免状についての問題が出題される。例えば、免状をなくしたときはどうするか、破けたときはどうするか、記載事項に変更があったときはどうするかなどといったものである。
- 免状の記載事項に変更があった場合
- 現住所の変更は対象外。
- 氏名、本籍の変更はこれに該当。
- 変更になったときは、そのことを証明する書類を添付して、居住地または勤務地を管轄する都道府県知事にその書き換えを申請する。
- 免状をなくした場合・免状を汚した場合・免状が破けた場合
- 都道府県知事に再交付を申請する。
- 免状の汚損または破損によって申請する場合は、申請書に当該免状を添えて提出する。
- 亡失した免状を発見したときは、これを10日以内に免状の再交付を受けた知事に提出する
- 規則違反した場合
・免状の書き換えと再交付の違いは次の通りである。
| 事由 | 申請義務 | 申請先 | 添付書類 |
書換え | 本籍・氏名の変更 | 有 | 居住地または勤務地の知事 | 戸籍と住民票 |
再交付 | 亡失・滅失、汚損・破損 | 無 | 交付または書換えする知事 | 無 |
危険物取扱者以外に専任される者 †
危険物保安統括管理者 †
・危険物の免状はもっていないくてもなれる。
危険物施設保安員 †
・危険物の免状はもっていないくてもなれる。
・所有者、管理者、占有者に選任の義務が課されているのは、指定数量の100倍以上の危険物を取り扱う製造所または取扱者と、すべてのいそう取扱所である。
自衛消防組織 †
・所有者、管理者、占有者が設置する。
・大量の危険物を取り扱う製造所などにこの義務がある。
危険物を取り扱う施設 †
・製造所はひとつ、貯蔵所は7つ、取扱所は4つある。
製造所 †
・危険物そのものを製造する施設のこと。
・規模が大きいが、貯蔵所や取扱所に比べると施設の数は圧倒的に少なく、危険物施設の中の1%にもならない。しかし、災害の発生ということになると、1位の一般取扱所、2位の給油取扱所に次いで多く、しかも重大な災害になり、1件当たりの被害金額がもっとも多いのが特徴である。
貯蔵所 †
・危険物を貯蔵しておく施設のこと。
・種類が多いせいもあって、危険物の取扱施設の6割近くをこの貯蔵所が占めている。
・その中でもっとも多いのが地下タンク貯蔵所、2番目が屋内貯蔵所である。
・貯蔵する場合はタンク内に入れることが多いため、○○タンク貯蔵所というものが5つもある。
- 屋外タンク貯蔵所
- 屋外にあるタンクにおいて、危険物を貯蔵し、または取り扱う貯蔵所のこと。
- 「貯蔵する」以外にタンクに液体を出し入れするので、「取扱い」もする貯蔵所である。
- タンクの周囲にはコンクリート製の防油堤があり、箱の中にタンクが入った形をしている。
- 屋内タンク貯蔵所
- 屋内にあるタンクにおいて危険物を貯蔵し、取り扱う貯蔵所のこと。
- 下タンク貯蔵所
- 地盤面下に埋設されているタンクにおいて、危険物を貯蔵し取り扱う貯蔵所のこと。
- 簡易タンク貯蔵所
- 簡易タンクにおいて危険物を貯蔵し取り扱う貯蔵所のこと。
- 昔、ガソリンスタンドで使っていた給油の出来るタンクなどのことをいう。
- 移動タンク貯蔵所
- 車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、または取り扱う貯蔵所のこと。
- 屋内貯蔵所
- 倉庫内において危険物を貯蔵し、取り扱う貯蔵所のこと。
- 屋外貯蔵所
- 屋外の場所において、第2〜第4石油類、動植物油類などを貯蔵し、取り扱う貯蔵所のこと。
取扱所 †
- 給油取扱所
- 固定した給油設備によって、自動車などの燃料タンクに直接給油するための危険物を扱う取扱所のこと。
- 移動できないこと。
- 燃料タンクに直接給油することを意味するので、石油缶やポリタンクを持ってきた人にここからガソリンを入れてあげることはできない。
- 販売取扱所
- 店舗において容器入りのまま販売するために、危険物を取り扱う取扱所。
- 指定数量の5倍以下なら第1種販売取扱所、5倍を超えて15倍以下なら第2種販売取扱所となる。
- 移送取扱所
- 配管およびポンプならびにこれらに付属する施設によって、危険物の移送の取扱いを行う取扱所のこと。
- 主としてパイプラインのことを指す。
- 一般取扱所
共通する貯蔵・取扱いの基準 †
共通する技術上の基準 †
- 許可数量以上の取扱い等は不可
- 許可を受けた品名や数量以上の危険物を取り扱うことはできない。
- 火気厳禁と立入禁止
- みだりに火気をしようしてはいけない。
- 係員以外のものをみだりに出入りさせない。
- 整理清掃
- 常に整理および清掃に努めるとともにみだりに空箱その他不必要な物件を置かないこと。
- くず、かす
- 危険物のくずやかすなどは、1日に1回以上当該危険物の性質に応じて安全な場所で廃棄その他適当な処理をすること。
- 遮光、換気、漏洩等
- 危険物を貯蔵しまたは取り扱っている建築物等においては、危険物の性質に応じた有効な遮光、換気を行うこと。
- 危険物の貯蔵、取扱いを行うときは、危険物のもれ、あふれ、または飛散の防止に努めること。
- 保護液中に保存する危険物は液から露出しないようにすること。
- 周囲の環境
- 危険物の変質、異物の混入等により当該危険物の危険性が増大しないよう措置を講ずること。
- 設備、機械器具、容器等を修理する場合は安全な場所において、危険物を完全に除去した後で行うこと。
- 電線と電気器具を完全に接続し、かつ火花を発する機械器具、工具、履物等を使用しないこと。
- ていねいな取扱い
- 危険物を収納した容器を貯蔵しまたは取り扱う場合はみだりに転倒させ、落下させ、衝撃を加え、または引きずる等粗暴な行為はしないこと。
類ごとに共通する技術基準 †
第1類(酸化性固体) †
共通する性質は次の通り。
- 一般に無色の結晶または白色の粉末で、不燃性である。
- 加熱により分解して酸素を発生し、酸素供給体になる。
火災の予防は次の通り。
- 可燃物や被酸化性物質との接触や混合を避ける。
- 分解を促す物品との接近を避ける。
- 災害を起こす恐れのある過熱、衝撃、摩擦を避ける。
- アルカリ金属の過酸化物およびこれらを含有するものは、水との接触を避ける。
- 密封して冷所に貯蔵する。
- 容器に入れた状態であっても、接近させて置いてはいけない。
火災の消化は次の通り。
- 第1類危険物は分解により酸素を供給するから、他の可燃物の燃焼はより激しくなり、かつ危険物自体の分解も著しく進行する。よって、一般に大量の水で冷却し、酸化性物質の分解温度以下に下げることが必要である。
- アルカリ金属の過酸化物の場合は、初期の段階では炭酸水素塩類などを使用する粉末消火器、乾燥砂などを用いる。
第2類(発火性物品、可燃性固体) †
共通する性質は次の通り。
- いずれも固体で、比重は1より大きく、水に不溶である。
- 比較的低温で着火しやすく、燃焼によって有害ガスや可燃性ガスを発生するものがある。
- 酸化されやすく、第1類危険物との混合は衝撃などにより爆発する危険性がある。
- 空気中で自然発火し、また水と作用して有毒ガスを発生するものがある。
火災の予防は次の通り。
- 酸化されやすいので、酸化剤との接触や混合を避ける。
- 炎、火花、高温体との接触を避ける。
- 過熱を避ける。
- 金属粉は水、酸との接触を避ける。
- 一般に防湿に注意して容器は密封し、冷所に貯蔵する。
- 鉄粉、金属粉、マグネシウムおよびこれらを含有するものは、水または酸との接触を避ける。
火災の消化は次の通り。
- 鉄粉、金属粉、マグネシウムまたはそれらを含有するものは、乾燥砂で窒息消火する。
- 鉄粉、金属粉、マグネシウムまたはそれらを含有するものは、水と接触すると可燃性の水素ガスが発生するので、水は使用できない。
- 赤りん、硫黄などは水、泡などの水系消化剤で冷却消火するか、乾燥砂で窒息消火する。
- 固形アルコールなどの引火性固体は、泡、粉末、二酸化炭素、ハロゲン化物により窒息消火する。
第3類(禁水性物質、自然発火性物質) †
共通する性質は次の通り。
火災の予防は次の通り。
- 空気または水との接触を避ける。空気には水蒸気を含むから。
- 容器は密封し、破損または腐食に注意し、冷所に貯蔵する。
- 黄りんは空気と接触すると自然発火するので、水中に保存する。逆に、アルカリ金属やアルキルリチウム、アルキルアルミニウムなどはわずかな水分と反応してしまうので、灯油などの非水系溶剤中に浸して、または溶解して保存する。
火災の消化は次の通り。
- 禁水性物質の火災では炭酸水素塩類の粉末消化剤、自然発火性のみの物質の火災には水・泡などの水系の消化剤を使用する。
- 乾燥砂による窒息消化はすべての第3類危険物に適用できる。
第4類(可燃性液体) †
火災の予防は次の通り。
- 炎、火花または高温体との接触を避ける。
- みだりに蒸気を発生させない。
第5類(自己反応性物質) †
共通する性質は次の通り。
- 非常に燃えやすく燃焼速度も速いので、危険物の中でもっとも消化が困難な物質である。
- 固体または液体で、比重は1より大きい。
- 酸素を含んでいるので、自己燃焼性のものが多く、自然発火性のもの、引火性のものもある。
- 加熱、衝撃、摩擦によって発火、爆発するものが多い。
火災の予防は次の通り。
- 火、火花もしくは高温体との接近、過熱、衝撃、摩擦を避ける。
火災の消化は次の通り。
- 大量の水による消化が効果的であるが、多量に燃えている場合は消化は極めて困難である。火災発生時の危険性という意味では、危険物の中でもっとも危険と言える。
第6類(酸化性液体) †
共通する性質は次の通り。
- 不燃性の液体。
- 水と激しく反応するものがある。
- 酸化力が強く、防食性があり、その蒸気は有害。
火災の予防は次の通り。
- 貯蔵容器は耐酸性のものとし、密封して冷暗所に保存する。
- 可燃物、有機物のと接触を避ける。
- 水と反応するものは、水との接触を避ける。
火災の消化は次の通り。
- 一般に水や水系消化剤がもっとも適当であるが、危険物が飛散しないように注意する必要がある。
- 炭酸水素塩類の消火器や二酸化炭素、ハロゲン化物を用いた消化設備は使用できない。
- 流出事故の場合には乾燥砂をかけるか中和剤で中和する。
- 消火作業者は風上から作業し、マスク、めがねなどの保護具を着用する。
貯蔵の基準 †
- 同類のみの貯蔵
- 類を異にする危険物は同一の貯蔵所において貯蔵しないこと。
- 間隔をあけること
- 屋内貯蔵所においては、品名列ごとに取りまとめて貯蔵するとともに、建築物の内壁から0.3m以上、危険物の品名別ごとに0.3m以上それぞれ間隔をおくこと。
- 屋外貯蔵所においては、品名列ごとに0.5m以上の間隔をおくこと。
- 弁は常時閉
- 屋外タンク、屋内タンク、地下タンク、簡易タンクの軽量口は、計量するとき以外は閉鎖しておくこと。
- 屋外タンク、屋内タンク、地下タンクの元弁、注入口の弁と蓋は、危険物を出し入れするとき以外は閉鎖しておくこと。
- 屋外貯蔵タンクの防油堤の水抜口は常時閉鎖しておくとともに、滞水等したときは遅滞なくこれを排出すること。
- 移動タンクの底弁は、使用するとき以外は完全に閉鎖しておくこと。
- 移動タンクについて
- 移動タンク貯蔵所については、安全装置その他の付属配管には、さけ目、結合不良、変形、もれが起こらないようにすること。
- 移動タンクの中に危険物が貯蔵されているときには、牽引車と被牽引車とは結合しておくこと。
- 移動タンク貯蔵所には、常時完成検査済証を備え付けること。
取扱いの基準 †
- 製造
- 蒸溜工程において、圧力変動により液体または蒸気が漏洩しないようにすること。
- 抽出工程においては、圧力が異常上昇しないようにすること。
- 乾燥工程においては、温度が局部的に上昇しない方法を取ること。
- 粉砕工程においては、危険物の粉末が浮遊しないようにすること。機械器具につけたままで取り扱わないこと。
- 詰め替え
- 詰め替えに使用する容器は、自治省令で定めるものにすること。
- 詰め替え作業は防火上安全な場所で行うこと。
- 消費
- 消費とは、危険物を燃料として使用したり、吹付塗装のように大気中へ飛ばしたり、洗浄のように使用後は処分したりして、使用後に危険物の形が残らなくなるものを指している。
- 吹付塗装作業は、防火上有効な隔壁で区画された安全な場所で行うこと。
- 焼入作業は、危険物が危険な温度に達しないように行うこと。
- 汚色、洗浄は可燃性蒸気の換気をよくして行い、廃液をみだりに放置しないで行うこと。
- バーナーで燃焼させるときは、逆火を防ぎ、かつ石油類があふれないようにすること。
- 廃棄
- 焼却するときは安全な場所で他に危害を及ぼさない方法で行い、必ず見張人をつけること。
- 危険物は、海中、水中に流出または投下しないこと。
- 埋没する場合は危険物の性質に応じ、安全な場所で行うこと。
- その他の技術上の基準
- 給油取扱所
- 固定給油設備を用い直接給油する。
- 給油中はエンジン停止、他の自動車は駐車禁止。
- 自動車等の洗浄に引火液体の洗剤の使用禁止。
- 油分離装置にたまった油は、あふれないよう随時汲み上げる。
- 第1種販売取扱所、第2種販売取扱所
- 容器の基準を定めた省令の規定の容器に入れ、かつ容器入れのまま販売すること。
- 危険物の配合は、省令で定めた配合室以外では行わないこと。
- 移送取扱所
- 移送は、設備の安全を確認した後に開始すること。
- 移送する危険物の圧力、流量を常に監視し1日に1回以上安全確認のための巡視を行う。
- 地震を感知したら、省令で定める災害の発生、拡大を防止する措置を講ずること。
- 移動タンク貯蔵所
- 危険物を注入するときは、注入口に移動タンクの給油ホースを緊結すること。
- ガソリン、ベンゾールなど静電気による災害の発生する恐れのある危険物を移動タンクに注入するときは、アースを取ること。注入管の先端を底分につけること。
- 移動貯蔵タンクから危険物を注入するときは、移動貯蔵タンクの原動機を停止すること。
参考文献 †
- 『試験に出る超特急マスター 乙種4類危険物取扱者問題集』
- 『実況ゼミナール!乙種4類危険物取扱者試験』
- 『丙種危険物取扱者受験マニュアル』