目次 †
月の錯視 †
- 地平線近くで月が大きく見える現象のこと。
- 5円玉を両手で持っていっぱいに腕を伸ばしたとき、満月がその5円玉の真ん中の穴にすっぽり入ってしまうぐらいの大きさである。これは地平線近くにあるときも、空高くに登ったときも同じである。よって、地平線近くで月が大きく見えるのは目の錯覚とわかる。
- 水平線近くに満月が昇り始めたに見える月の大きさと、天頂に見える月の大きさは違って見える。明らかに水平方向の月の方がはるかに大きく見える。
- しかし、実際に満月の写真を撮ってみると、どちらの月も判別できるほどの差異はない。
- 英語では「ムーン・イリュージョン」と呼ばれている。
- 太陽の錯視というのはあまりいわないのは、太陽がまぶしすぎて昼間は直視することができないからだと思われる。
月の錯視が起こる理由 †
屈折説 †
- アリストテレスが提唱したのは空気層の屈折説である。プトレマイオスもこの説を唱えていた。
- 地平線近くの空気層の厚みによって屈折が起こり、月が大きく見えるという説である。
- 空気中には水蒸気がたくさん含まれているので、その影響で物体が屈折して見えることはありえる。しかし、屈折という現象は光の進行方向を変えるだけであり、大きさを変えない。そのため、この説は否定される。
瞳孔拡大説 †
- 瞳孔拡大説というのは、地平線近くでは目に入ってくる光が弱められるため、目の瞳孔が大きくなり、月も大きく見えるというものである。
- しかし、月以外の建物の大きさは変わらないため、この説も否定される。
水晶体扁平【へんぺい】説 †
- 水晶体扁平説とは、空の上を見ると、眼球の水晶体が薄くなるために、月が小さく見えるという説である。
視線説 †
- 視線説とは、視線を上げて見ると小さく見えるため、地平線の月が大きく感じられるという説である。
ポンゾ錯視説 †
- ポンゾ錯視説とは、ポンゾ錯視をもとにした説である。
- ポンゾ錯視とは、人間は物体の大きさを背景に依存して判断しているというものである。
- 無意識のうちに地平線近くの建物や木々などと比較して月を見るため、脳が実際の大きさよりも大きいように解釈してしまうというわけである。
- 現在最も有力な説とされている。
- ただし、このポンゾ説にも異を唱える学者もおり、2000年以上経ってもこの現象の謎は解明されていない。
*地勢説 †
- カウフマンとロックらが唱えた。
- 水平線近くには山や海といった風景があるので距離感が生じやすくなり、これが大きさの知覚に影響を及ぼし、錯視を引き起こしているものと考えた。
- そして、人口満月の呈示装置を考案し、距離感をなくすと錯視量（月の大きさの見え方の違い）が少なくなることを明らかにした。
- しかし、例えば月までの距離を推定させると、天頂より水平線の場合のほうがずっと知覚に見えるという結果も得られており、月の錯視の問題を完全に解決するまでには至っていない。
参考文献 †
