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ICMP

目次 †

ICMP †

• IP通信を補佐するために様々な制御情報をやり取りする目的で作られたプロトコルである。
• 基本仕様はインターネットの標準規格を定めるIETFが1981年にRFC792としてまとめている。
  • そのRFC792の冒頭部分には、「ICMPは、IPの欠かせない一部分である。ICMPはすべてのIPソフトに実装されなければならない」と記述されている。
  • RFC792は基本的にICMPの仕様を決めているだけである。それを具体的にどう役立てるかはOS、TCP/IPソフト、アプリケーションの実装に任されている。
    • ただし、IP端末の仕様を定めるRFC1122などでは、ICMPの扱いについて細かく規定しているガイドライン的な文書もある。
• ICMPはパケットフォーマット的には、IPの上位プロトコルに位置付けられている。
  • ただし、RFCにも書かれているように、ICMPはIPの一機能を担っている。そのため、IPと同じレイヤ―のプロトコルとされている。
    • IPの制御用プロトコルという役割上、TCPやUDPのようにアプリケーションのデータを運ぶ役割を果たすトランスポート層のプロトコルとはいえないため。

ICMPの用途 †

送信元に対するエラー通知 †

• IPパケットが宛先のコンピュータで処理されるまでの過程で、何らかのエラーが起こったときに使われる。
• 単にエラーが起こったという事実を伝えるだけでなく、送信元に対してその原因などのメッセージも伝えられる。

送信元による情報照会 †

• 送信元のPCが自分から他のネットワーク機器に対して情報を問い合わせるために使う。
• 問い合わせられる内容としては、目的のIPアドレスにマシンが存在するかといった基本的な確認から、自分のネットワークが持つサブネットマスク情報の調査、相手のマシンが持っている時刻情報の取得などがある。

ICMPのパケットフォーマット †

　上記フォーマットはIPヘッダとICMPデータから成る。それぞれは以下の部分から構成される。

• ICMPの場合は、IPヘッダ内のプロトコル番号は1になる。

ICMPパケットの構成要素 †

タイプ †

• 15種類ある。

コード †

• タイプと組み合わせて細かいメッセージ内容を定義する。

オプション †

• 内容はメッセージの種類によって異なる。

ICMPによる経路MTU探索 †

• まず通信相手にIPパケットを送るときに、IPヘッダ中に分割禁止（DF*1）フラグを立てて、パケットを送信する。
  • これが経路MTU探索の基本となる。

[例]Windowsパソコンが1,000バイトを超えるIPパケットを送り出したとする。しかし、通信経路上でMTUサイズが1,500バイトから1,000バイトに変わるところがある。このため、途中のルーターはその回線に1,000バイトを超えるIPパケットをそのままでは通せない。

　ルーターはIPパケットを分割して通そうと試みる。しかし、IPパケットにはDFフラグがセットされて分割禁止になっているので、ルーターは分割できない。

　この結果ルーターは、パケットを破棄すると同時に「分割したいのに分割できない」ことをICMPを使って送信元に通知する。
　このときルーターが送るICMPパケットは、タイプが3かつコードが4である。これは「分割が必要だが分割できないので、宛先まで届けられない」という意味である。

　また、ルーターの多くはこのとき、ICMPパケットのオプションデータの部分に、この先の回線を分割せずに通せるMTUサイズを埋め込んで送る。

　WindowsはこのICMPパケットを受け取ると、分割されずに送れるIPパケットのサイズがわかるので、一時的にMTUサイズを書き換えて、IP通信を継続するのである。　◇

ICMPによるリダイレクト †

• リダイレクトとは、ルーターなどが送信元のPCに対して経路変更を指示する仕組みのことである。
• LAN内に複数のルーターがある場合に使われる。
• タイプが5かつコードが1のICMPリダイレクトメッセージが使われる。
  • オプションデータ部分には、送信元がIPパケットを送るべきルーターのIPアドレスが含まれる。
• PCがICMPリダイレクトメッセージを受信すると、自分のルーティングテーブルを書き換えて、宛先IPアドレスとの通信をしばらくの間指示されたルーター経由で行うようになる。

ICMPによるフロー制御（送信元抑制） †

• フロー制御とは、ネットワークでやり取りするデータが破棄されないように、通信速度を調整するための仕組みのことである。

[補講]フロー制御そのものは、IPの上位プロトコルであるTCPのほか、EthernetでもIEEE802.3xでフロー制御を規定するなど、様々なプロトコルが備えている。　◇

ICMPによるPing †

• ICMPエコー要求とICMPエコー応答という2種類のICMPパケットをやり取りすることで実現する。
• いつもエコー応答が返ってくるとは限らない。Pingで相手との接続を確認できない原因は大きく3つある。
  1. 宛先サーバーが存在しないケース
  2. パケットのやり取りに時間がかかりすぎて、Pingが時間切れ（タイムアウト）と判断しまうケース
     • これが原因の場合は、Pingのオプションでタイムアウトまでの時間をの延ばすことで正しい結果を表示できるようになる。
  3. 宛先サーバーがPingに答えないケース

ICMPエコー要求 †

• 識別子とシーケンス番号は、個々のICMPパケットを識別するための任意の値である。

ICMPエコー応答 †

• 識別子とシーケンス番号はエコー要求と同じ値である。
• ダミーデータはエコー要求と同じデータである。

ICMP利用によるtracert †

• Windowsに付属するtracertコマンドは、ICMPエコー要求を使う。

[補講]UNIXのtracerouteコマンドは、ICMPエコー要求ではなく、UDPパケットを使うものがある。

　UDPパケットを送るといっても、途中のルーターの処理はICMPエコー要求の場合とまったく同じである。ただ、最終的にUDPパケットが宛先に到着したときだけは違う。
　宛先マシンは、通信に関係ないUDPパケットを突然受け取るとICMPでエラーを返すので、その応答パケットを見てコマンドの終了を判断するのである。　◇

ICMP利用によるポートスキャン †

• サーバーは開いていないポート宛にUDPパケットが届くとICMPのポート到達不能メッセージを送信元に返す。
  • これを利用してサーバーに不要なポートが開いていないかを調べることができる。

ICMPのメッセージ一覧 †

参考文献 †

• 『IP&ICMP』