*目次 [#e1cc6a48]

#contents


*トランジスタの発明 [#k770c7e5]

 トランジスタは1948年に発明されました。トランジスタを発明したのは、アメリカのベル研究所のショックレー、バーディーン、ブラッテンの3人の科学者である。

 真空管に取って代わる部品として開発された。トランジスタは真空管から比べて、構造がシンプル、低消費電力、省スペース、長寿命といった長所がある。トランジスタの誕生後、真空管は姿を消していった。現在の各種電子機器の設計に欠かせない存在である。


*トランジスタ [#k425ea85]

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image4/toranjisuta2.jpg)
トランジスタの概観
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・コレクタとエミッタの両端に電圧をかけても電流は流れない。ゲートから流れる電流の量に応じて、コレクタとエミッタ間の電流も大きくなったり小さくなったりする。つまり、ゲートに流す少しだけの電流でコレクタとエミッタ間の大きな電流をコントロールすることができるのである。これを''増幅作用''という。

・ゲートに電流を流したり、とめたりして、スイッチング動作を制御することもできる。
・トランジスタを作るときに使う半導体は[[シリコン]](Si)の単結晶を使う。


*トランジスタの特徴 [#o515e96b]

・電流を増幅するために使う。

・NPN型とPNP型のTRは動作原理は同じだが、トランジスタに印加する電圧とTRの端子電流の方向(極性)が反対になる。

・TRの記号の円内の矢印は通常の動作におけるエミッタ電流の方向、即ち極性を表す。

[補講]ここで通常といったのは、特殊な場合で逆向きに流すこともあるからである。特殊な場合を除いてはメリットが乏しく、不用意に逆電流を流すとTRが壊れる恐れもある。

・NAND回路の出力にトランジスタを繋ぐとわずかなベース電流が増幅されて、大きなコレクタ電流となり、コレクタ側に繋いだLED(発光ダイオード)を点灯させることができる。


*トランジスタの種類の見分け方 [#za2850fb]

 シリコンチップの内部で、III族の不純物元素の多い場所を''P型領域''、V族の不純物元素が多い場所を''N型領域''という。P/NはそれぞれPositive(正)/Negative(負)の頭文字である。

 N型半導体をP型半導体で挟んだ構造のトランジスタを''PNP型トランジスタ''という。同様にして、P型半導体をN型半導体で挟んだ構造のトランジスタを''NPN型トランジスタ''という。○△□型トランジスタの○/△/□はそれぞれエミッタ領域/ベース領域/コレクタ領域に対応している。

例:PNP型トランジスタは、エミッタ領域がP形、ベース領域がN形、コレクタ領域がP形である。

 どちらとも、電流/電圧の関係は同じですが、電流の向きが逆であり、端子間電圧もプラスとマイナスが逆になる。


*トランジスタの型番について [#s0941dec]

 あるトランジスタがNPN型かPNP型なのか見分けるには名称または記号を確認する。 

 トランジスタの名称は次のように付けられる。

|2S|英文字|数字|英文字|

 2Sに続く英文字は、A,B,C,Dのいずれかで次のように決められている。

|A|PNP型高周波用|
|B|PNP型低周波用|
|C|NPN型高周波用|
|D|NPN型低周波用|

 ただし、低周波用と高周波用の区別はそれほど厳密ではない。

例:オーディオアンプにも2SAタイプや2SCタイプが多く使用される。


 A,B,C,Dの右側に続く数字は登録順につける番号で、11から始めることになっている。

 最後の文字は改良品種を示すもので、改良品種が出るごとに、A,B,・・・,Kまでつけられる。


**トランジスタの図記号について [#eac5dd10]

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image4/toranjisuta1.JPG)
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 左側がNPN型、右側がPNP型のトランジスタの回路図における記号である。Cはコレクタ、Bはベース、Eはエミッタを意味している。

例:抵抗が接続されている端子をベース、電流が接続されている端子をコレクタ、下向きの矢印がある端子をエミッタと呼ぶ。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image1/transistor1.JPG)
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*トランジスタの種類 [#k6881813]

**アロイ(合金)型トランジスタ [#a5595ff0]

・アロイ(ally)とは合金のこと。アロイ型トランジスタとは、トランジスタのPN接合を作るのに、合金の作り方を利用するものである。

・N型ゲルマニウム(Ge)の単結晶の薄い板の両面に、P形不純物(わずか混ぜるとP型になるもの)のインジウム(In)の小さな粒を押し当てて、水素の中で600℃の高温に加熱する。すると、このインジウムの粒が溶けて、ゲルマニウム結晶の中に溶け込んでいくが、こうしてインジウムが入ってきた部分はN型ゲルマニウムだったのが、インジウムの入り込んだP型層になる。つまり、真中にN型、両側にP型というPNP型トランジスタを作られたことになる。

・このタイプのトランジスタは1948年のショックレイの開発以来70年ごろまで広く作られたが、現在ではほとんど作られていない。


**プレーナ型トランジスタ [#o80aef3c]

・プレーナ(planer)は平べったく作られるタイプのトランジスタ。

・アロイ型との大きな違いは、半導体基板の両面から下降するアロイと違って、このプレーナ型は片面からの加工で済むという点。この加工には、写真技術を利用した細かいフォトエッチングなどが活用されて、シリコン基板の表面に、一旦丈夫な酸化膜を作り、それに感光すると変質するフォトレジスト(感光樹脂)を塗ります。この上に必要な窓穴パターンを書いたマスクをかぶせてから紫外線を当てて感光する。これを現像処理すると、窓穴部分のレジスタが除去されて、顔を出した酸化膜を薬品で溶かすとシリコンが出現する。

 これから不純物を作用させたり、もう一度酸化膜をかぶせたり、と何度も加工を繰り返して平べったいトランジスタのペレットが出来上がる。実際には10cm径くらいの薄板に何千個と同時に作られる。


**エピタクシャル・プレーナ・トランジスタ [#pb314d5d]

・プレーナ型から改良されたもので、現在のトランジスタの主流となっている。

・エピタクシャル(epitaxial)とは、「結晶軸に沿って」という意味で、シリコン基板の結晶軸に沿って新しい結晶層を作りこむ技術である。

・例えば、気相エピタクシャルではP型とN型不純物の濃さなどを加熱しながら流すガスの成分を調整して細かく変えられますし、おかげで違う結晶を組み込みヘテロ構造も作られている。


**パワートランジスタ [#x9bb3fcc]

・大きな電流を扱うものを特にパワートランジスタと呼ぶ。

・本体には放熱用の金属板がついているのが特徴である。


*トランジスタの接地回路 [#qf7ae69d]

 トランジスタには増幅の作用があるが、トランジスタに入力電流を加えたときに、それがどのくらいに増幅されて出てくるかを表すのが電流増幅率である。

 また3つの電極のいずれかを接地させることによって、次の基本回路を作ることができる。

**エミット接地回路 [#q839acc3]

・トランジスタ増幅回路として、もっともよく使用される基本的な回路である。

・入力電圧と出力電圧は逆相となり、入力電圧がβ倍(エミッタ接地の電流増幅率)されてコレクタ側に表され、利得も大きいので、受信機に使用される回路はほとんどがこの接地方式である。

**ベース接地回路 [#r138aa31]

・この方式は入力インピーダンスが低くて出力インピーダンスが高いので、エミッタ接地よりも周波数特性がよく、高周波増幅回路に使用されている。

・電力増幅に使用するとエミット接地より利得は低くなる。

**コレクタ接地回路 [#r77d01d4]

・入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低くなり、電圧利得はないのだが、100%の負帰還がかっているので、安定したひずみの少ない回路を作ることができる。

・特殊な回路に使用される。


*トランジスタの最大定格(絶対最大定格) [#ue861df3]

・素子に加えることのできる最大電圧、流すことのできる最大電流などは決まっている。

・一瞬でもこの値を越えてしまうと、破壊の恐れがある。


**電極間最大電圧:VSUB{CBO};、VSUB{CEO};、VSUB{EBO}; [#d2667b8a]

・トランジスタは3本ピンの素子なので、ピン間に加える電圧の組み合わせはVSUB{CB};、VSUB{CE};、VSUB{EB};の3通りある。

・このとき残った1本のピンをオープンにしたままにして測定したデータが規格表に載せられているVSUB{CBO};、VSUB{CEO};、VSUB{EBO};である(Oはオープンの意味)。それは、これが耐圧の最も弱い状態だからである。

**コレクタ電流:ISUB{C}; [#n0759f4a]

・コレクタに連続して流すことのできる電流がISUB{C(DC)};です。単にISUB{C};と書いてあっても同じ意味である。

・ISUB{C(pulse)};は、パルス状に(瞬間的に)流せる最大電流値である。

**全損失:PSUB{T}; [#e1d53008]

・周囲温度25℃において、そのトランジスタが動作に伴い発生する熱量の許容最大値のことである。

・これは大部分がコレクタで発生する熱損失(コレクタ電圧×コレクタ電流)なので、最大コレクタ損失PSUB{C};としても表される。

・周囲温度が上昇すると、熱の放散が悪くなり許容全損失が減少する。

・パワートランジスタのように発熱量の多い素子では、放熱板に装着することを前提に接合(コレクタ)温度○○℃における仕様で最大××Wなどと表示される。

**電力損失:PSUB{C}; [#v23c28c6]

・規格表のPSUB{C};はトランジスタの内部で発生する''電力損失(コレクタ電力損失)''のことである。

・元々熱に弱いトランジスタ使用時には温まってしまうため、温度上昇という攻撃を受けることになる。

・PSUB{C};はこの値以下を使えば、温度上昇したとしてもトランジスタの働きに支障を及ぼさないということを示す。当然周囲の温度も関係するので、周囲温度は25℃という条件がついている。

・例えば、エミッタ・コレクタ間電圧VSUB{CE};=9Vで、コレクタ電流ISUB{C};が2mA流れたとき、電力損失PSUB{C};はいくらになるか求めてみる。

 「電力=電流×電圧」より、次のようになる。

PSUB{C};~
=ISUB{C};×VSUB{CE};~
=0.002×9 (∵2 [mA]=0.002 [A])~
=0.018 [W]

 2SC458の場合、PCの最大定格は0.2Wだから、もしICが10倍になったとしても許容範囲に収まることになる。

 ところがオーディオのスピーカーを鳴らすためのトランジスタになると、コレクタ電流が数Aになるものがあり、この場合は電力損失も10W前後の値になるので発熱量もぐんと大きくなる。そのため、トランジスタに放熱器を付けて、熱を上手に外部に逃がす工夫が必要となる。

**ジャンクション(接合)温度:TSUB{j}; [#hde37c78]

・トランジスタのような半導体素子は熱に弱いので、周囲温度が常温であっても、全損失によって発生する熱でPN接合部が破壊されることがある。 

・その許容温度限界がTSUB{j};である。

**保存温度:TSUB{stg}; [#q1380677]

・電流を流していない保存状態下でも、この温度範囲内に保たないと破損する恐れがあるという温度のこと。


*トランジスタの3つの特性 [#y20ee1d1]

**ISUB{B};-ISUB{C};特性 [#pf11e35c]

・ベース電流とコレクタ電流の関係。

・比例関係に近い。

**VSUB{BE};-ISUB{B};特性 [#i026c81f]

・ベース・エミッタ間電圧とベース電流の関係。

・比例関係ではなく、2次関数に近い。

**VSUB{CE};-ISUB{C};特性 [#pd3c2bee]

・コレクタ・エミッタ間電圧とコレクタ電流の関係。 

・ベース電流の値によっていくつもの曲線になる。

・この上にさらに負荷線という直線を引いて、ベース電流をいくら流すか判断の材料とする。負荷線によって、ISUB{B};とISUB{C};の値を決めることができる。


*h定数 [#nd2caed6]

 トランジスタを使用するとき、h定数と呼ばれるものを用いる。h定数には次のようなものがある。

**hSUB{OE};(出力アドミタンス) [#h31ece01]

・VSUB{CE};-ISUB{C};特性曲線の傾き、即ちISUB{C};/VSUB{CE};である。

・単位はシーメンス[S]。

**hSUB{FE};(電流増幅率) [#c7934766]

・ISUB{B};-ISUB{C};特性曲線の傾き、即ちISUB{C};/ISUB{B};である。

・単位はない。

**hSUB{IE};(入力インピーダンス) [#dfdd6607]

・VSUB{BE};-ISUB{B};特性曲線の傾き、即ちVSUB{BE};/ISUB{B};である。

・単位は[Ω]。

**hSUB{RE};(電圧帰還率) [#b609a155]

・VSUB{CE};-VSUB{BE};特性曲線の傾き、即ちVSUB{BE};/VSUB{CE};である。

・単位はない。


*増幅 [#d3a907b8]

・''増幅''とは電気信号の周波数や波形の特徴を変えずに振幅だけを大きくすることである。

・測定可能な量(例えば、電圧や電流など)を増大させることを増幅作用という。そのための装置を増幅器という。一般的に、電圧、電流の振幅を増大することを意味し、その動作素子によって半導体増幅器、真空管増幅器などがある。

・入力対出力の値を''増幅率''という。

・増幅回路は発振回路や演算回路の構成要素としても使われる。動作の安定性や性能の向上を目的としたデカップリング回路やAGC回路などがそれである

・ほとんどの増幅回路が、トランジスタを利用して回路を構成する。

**増幅の仕組み [#v594d36a]

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/zoufukuki.gif)
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 小さな振幅の電気信号を増幅器に入れると大きな振幅になる。

**増幅回路の分類と構成 [#ta44ff34]

 増幅回路を分類すると次のようになる。

+その動作点の取り方(バイアス電圧のかけ方 A級/B級/C級)
+増幅する交流信号の周波数(低周波・高周波)
+増幅の目的(電圧・電力)
+回路構成(シングル、プッシュプル)

 増幅回路を考える場合には真空管やトランジスタのエッチ方法も関係している。真空管ならばカソード接地、トランジスタならばエミッタ接地がほとんどである。

**動作点の違いによる増幅の分類 [#r354d73b]

 交流信号の振幅を大きくする増幅の仕方には、基本的にA級/B級/C級増幅の3つがあります。この分類はバイアス電圧をVSUB{BE};-ISUB{C};の特性曲線のどの位置に持ってくるかによってわける方法です。出力波形・動作点の面でそれぞれに大きな特徴がある。この他にAB級増幅もあるが、これはAとBの中間と考えてよい。 

 増幅効率は次のような大小関係になる。

A級<B級<C級

***A級増幅 [#j31b13d1]

・特性直線の中央にP点(動作点)のあるものを''A級増幅''という。

・入力信号の有無にかかわらず、常に出力電流としてのコレクタ電流ICが流れる。

・出力側の波形にひずみがない。

・増幅効率が悪い。

***B級増幅 [#i0320eeb]

・特性直線の下側にP点(動作点)のあるものを''B級増幅''という。

・入力信号の正の半周期のときのみコレクタ電流ICが流れ、負の半周期のときは電流は流れない。

・A級増幅より増幅効率がよい。

***C級増幅 [#wd3d87db]

・特性直線において、P点(動作点)がB級増幅のときより、さらに左側に来ているものを''C級増幅''という。

・入力信号が正の半周期のとき、その一部の間しかコレクタ電流ICが流れない。

・増幅効率がもっともよい。

・ひずみが最も大きいが、大きな出力が取り出せる。

***まとめ [#icf24633]

|A級増幅|ひずみは少ないが、効率が悪い。|
|B級増幅|ひずみがやや多いが、出力が大きい。|
|C級増幅|ひずみが多いが、効率がよい。|
|AB級増幅|A級とB級の中間的な特徴を持ち、それぞれの長所を引き出している。|


**トランジスタの整流作用と増幅率の関係 [#ye2160b0]

・TRのベース・エミッタ間は(PN接合)ダイオードになっていて、整流作用がある。

[補講]PN接合とはP型領域とN型領域の境界部分にごく薄い(1μmぐらい)層のこと。よって、TRのエミッタ領域とベース領域の境目にひとつのPN接合があり、ベース領域とコレクタ領域の境目にもあるということ。そして、ベース・エミッタ間のPN接合をエミッタ接合、ベース・コレクタ間のPN接合をコレクタ接合という。

・PN接合に印加される電圧の極性に応じて順バイアスまたは逆バイアスと呼ぶ。

・TRには2つのPN接合があり、各PN接合について順バイアスまたは逆バイアスの選択が許されるから、全部で4通りの組合わせがある。

|動作状態|エミッタ接合|コレクタ接合|
|活性領域|順バイアス|逆バイアス|
|逆接続領域|逆バイアス|順バイアス|
|飽和領域|順バイアス|順バイアス|
|遮断領域|逆バイアス|逆バイアス|

 ISUB{C};とISUB{B};の比を直流電流増幅率といい、hSUB{EF};と表記する。

&mimetex("h_{EF} = \frac{I_{C}}{I_{B}}");

 これはトランジスタの増幅の性能をあらわすものである。ベース電流が何倍の大きさのコレクタ電流に増幅されるかを示す。 このhSUB{EF};のランクによって、ISUB{B};に対するISUB{C};の値が変化するばらつきが発生する。そのランクは次のように分かれている。
|ランク|hSUB{EF};|
|O|70〜140|
|Y|120〜240|
|GR|200〜400|
|BL|350〜70|


**エミッタ/ベース接地回路の特徴 [#o5cb6616]

 エミッタ接地・ベース接地といっても、エミッタやベースが直接アースされているのではありません。正確にいうとエミッタもベースも交流的にアース電位になるということです。''交流的アース電位''とは、例えば脈流のうちの交流分だけをアースすることをいう。普通アースといえば導線をつないでしまうことをいうが、そうすると電子はすべてアースに流れてしまう。このように完全にアースされては困る脈流の流れる回路で、バイパスコンデンサを繋ぐことによって、交流的アース電位に置かれた接地回路ができあがる。

***エミッタ接地の特徴 [#i803399f]

・電流増幅度と電圧増幅度が大きい。

・入力インピーダンスは中位。

・出力インピーダンスは大きい。

・入力信号と出力信号の位相は逆。

・エミッタ接地の電流増幅率は次の公式で求められる。 

(電流増幅率)=(コレクタ電流の変化)/(ベース電流の変化) 

***ベース接地の特徴 [#f4086527]

・入力インピーダンスは小さい。

・電流増幅率は1より小さい。

・入力信号と出力信号の位相は同じ。

・高周波増幅に適する。

・ベース接地の電流増幅率は次の公式で求められる。 

(電流増幅率)=(コレクタ電流の変化)/(エミッタ電流の変化)

**プッシュプル増幅回路 [#p8895a58]

・特性が同じで極性が異なる2つのトランジスタを用いて構成する。 

・大出力が得られる。

・電源効率がよい。

・波形がひずまない。

・入出力側にトランスを必要とする。

***コンプリメンタルSSEEP回路 [#i16159c3]

・プッシュプル増幅回路のひとつ。

・互いにコンプリメンタル(相補対称という意味)な2つのトランジスタを用いると、入力側のトランスによって入力信号の位相を判定させて加える必要がなく、出力側においてもトランスを用いないで直接負荷を接続することができる。


*トランジスタと温度の関係 [#ff770306]

・周囲温度のTSUB{a};が大きいとhSUB{FE};が増える。これはPNP型/NPN型の区別なく成立する性質である。

 1℃の温度上昇に対して、0.5〜1%ぐらいhSUB{FE};が増加する。ただし、温度係数は品種によって異なる。

・最適な動作点にコレクタ電流を定めても、温度が上昇すると、コレクタ遮断電流やベース-エミッタ電圧が変化し、動作点が変動してしまう。一般に、ゲルマニウム・トランジスタではコレクタ遮断電流、シリコン・トランジスタではベース-エミッタ電圧が、それぞれ問題となる。

・温度が上昇し、コレクタ電流が増加すると、接合部温度が上昇し、さらにコレクタ電流が増加する。そして、ついにはトランジスタを破壊するようになってしまう。このような現象を''熱暴走''という。


*低周波増幅 [#g82f7b59]

 プレーヤーのピックアップから取り出されるのは音の波形をした小さな電流なので、これをスピーカーからきちんと聞こえる音にするには大きく増幅する必要がある。

**バイアス回路 [#e1175e51]

 トランジスタ回路にエネルギー源として直流を供給することを''バイアスを与える''という。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/baiasu1.gif)
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 そのための回路を''バイアス回路''といい、VSUB{BE};を''バイアス電圧''という。

 B〜E間に与えたVSUB{BB};はISUB{B};を流すためのものであるから、次の図のようにVSUB{BB};を除いてもISUB{B};を流すことができる。つまり、回り込むことによって、電源がひとつだけでBEに電流を流せるわけだ。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/baiasu2.gif)
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 多く用いられているバイアス回路に、電流帰還バイアス回路がある。この回路の動作は次の通り。

1:バイアス電圧VBEは、次の式で表すことができる。

&mimetex("V_{BE} = V_{RA} - V_{RE} = R_{A} I_{A} - R_{E} \( I_{C} + I_{B} \)")

2:温度の上昇によってISUB{C};が増加すると、ISUB{E};も増加し、VSUB{RE};も増加する。ところが、VSUB{RA};が一定であるためVSUB{BE};が減少し、ISUB{B};を減少させる。したがって、ISUB{C};も減少する。

3:以上の動作により、この回路は温度変化によるISUB{C};の変化をVSUB{BE};に帰還させ、常にISUB{C};を一定の値に保つ負帰還作用を持つ。


**バイアスをかける [#u18e1a34]

 次に示すのはトランジスタのエミッタ接地回路である。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/base.gif)
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 このベースに小さな電流変化を入れてやると、コレクタ電流はそれにつれて大きく変化する。つまり増幅されるのだ。そのときベースに電流を流しておくこと(これを''バイアス''をかけるという)を忘れてはならない。バイアスをかけないと波の形で半分が切れてしまうからである。適当なバイアスをかけておけばきちんと増幅(拡大バージョンの相似)されて出力される。

 実際の回路では音の波形成分(低周波)に対する交流負荷と直流負荷の両方を考えて決めることになる。

 バイアスの掛け方といっても色々ある。例えば、固定バイアス、電流帰還バイアス、自己バイアスなどがある。

-固定バイアス
--ベースに抵抗Rを1本繋ぐだけで済むが、温度変化でトランジスタの特性が変化するとか電池の電圧が下がるとかすると直に出力に影響してしまい、不安定になりやすい。
-電流帰還バイアス
--エミッタEに抵抗が入れてあって、コレクタCの電流が増えようとするとここの電圧降下も増え、それだけベースBの電位とEの電位の差が減って、ベース電流が減り、ひいてはコレクタ電流を押さえる。
--やや回路はごたつくが、安定な本格式である。
-自己バイアス 
--固定バイアスに似ているが、2つの抵抗を使う。
--簡単なわりに安定な方式といえる。

 エミッタ接地トランジスタの静特性を測定すると、次の図のようになる。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image6/toranjisuta.jpg)
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**段間接合 [#s44a1204]

 低周波増幅のトランジスタの前の段、また増幅して出てくる出力を次のトランジスタにというような信号を伝えるつなぎ方を''段間接合【だんかんせつごう】''という。

***トランス結合 [#q4371a82]

・段間接合に低周波トランスを使う方法が''トランス結合''である。

・低周波トランスは鉄心(普通パーマロイ、大型でケイ素鋼などの板を重ねてある)に1次側と2次側の2つのコイルを巻いたものである。1次コイルに低周波を流すと磁力線の変化がコアを通って2次コイルの中に流れる。すると磁力線変化につれて2次コイルに電流が作られる。この1次と2次のコイルの巻き数を変えるとインピーダンス(交流に対して抵抗として働く成分)を増減できる上、直流抵抗が小さいので能率がよく利得の高い増幅ができる。 

・しかし、周波数によって特性が違ってきたり、歪んだりもしやすい。特に小さいトランスでは問題となる。

**抵抗接合(抵抗コンデンサ接合、RC接合) [#ka3b4506]

・段間接合に抵抗とコンデンサの組合わせを使う方法が''抵抗接合''である。

・トランス結合に比べて利得は低くなるが、簡単で安上がりにできるうえ、周波数特性のよいのが特長である。


*等価回路 [#pf1e9bae]

 次の図は実際の回路である。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/touka.gif)
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 これをh定数を用いた等価回路で表すと次の図のようになる。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image8/touka2.gif)
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 これより、回路の増幅度および入出力インピーダンスを求めると次のようになる。 

[1]電流増幅度ASUB{i};

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[2]電圧増幅度ASUB{V};

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[3]電力増幅度ASUB{P};

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[4]入力インピーダンスZSUB{i};

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[5]出力インピーダンスZSUB{o};

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*トランジスタのスイッチ作用 [#id2d5d6c]

 トランジスタがラジオやテレビの中で用いられるときには、主にアナログ信号を増幅する働きをしている。コンピュータの回路の中では、デジタル信号を素早く切り替えるスイッチング作用としている。

 ベースへ流れる電流をスイッチのON/OFFで変化させるとコレクタ側の電流も大きく変化する。

#img(http://s-akademeia.sakura.ne.jp/main/image1/transistor2.JPG)
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*トランジスタの故障 [#u47ada43]

 電子機器の故障としては、トランジスタによるものが非常に多く見られる。 

 トランジスタの特性を表すパラメータは色々あるが、第1にそれが不良品かどうかを調べ、第2にhSUB{FE};の値を調べることが有効である。

|測定の種類|テストに使う器具|内容|
|コレクタ電流、ベース電流の測定|電流計、可変抵抗、抵抗類||
|hSUB{FE};の静的測定|トランジスタチェッカー|あらかじめ計器に決められた条件の基で、hSUB{FE};を測定する。|
|特性の自動測定|カーブトレーサー(オシログラフ、階段波発生器)|測定条件を自動的に変えて、特性をブラウン管に表示する。|
|指なめテスト|テスタ、指、唾|最も簡単なhSUB{FE};測定法|
|回路電圧の測定|エミッタ抵抗、コレクタ抵抗の電圧降下の測定|トランジスタが正常なら電圧が降下する。トランジスタをはずさないで計れるのが長所。|

**コレクタ電流、ベース電流の測定 [#jdb3957c]

・測定法の中で一番基本的な方法である。

・ベース電流を流したときのコレクタ電流を測るというものである。 

・この測定法でhSUB{FE};が測定できるが、もしこの測定中にベース電流が流れなかったり、逆に異常に多く流れたりしたときはベース-エミッタ接合がオープンまたはショートしていると考えられる。 

・また、ある程度ベース電流は流れているのにコレクタ電流が流れなかったり、逆に異常に多く流れたときはコレクタ-ベース接合に以上があることがわかる。 

・よって、これはhSUB{FE};測定法であると同時に不良検査法でもある。

**hSUB{FE};の静的測定 [#k83b2d33]

・市販のトランジスタチェッカー、即ちhSUB{FE};がメーターで接続できる装置を使う。

・トランジスタチェッカーには色々な種類がある。

**特性の自動測定 [#hd120a8f]

・これはベース電流とコレクタ電圧を自動的に順次増加し、そのときのコレクタ電圧とコレクタ電流とをブラウン管に表示させる装置である。 

・表示部にカーブが表示される。

・これを見れば、トランジスタの特性がわかり、同時に不良品かどうかの識別も行うことができる。 

・これは多数のトランジスタを専門的に測定するための方法で、一般に使うには高級すぎる。

**指なめテスト [#g4c4ddf4]

・この方法はトランジスタの特性を詳しく知ることはできないが、トランジスタが使えるかどうかの判定はできる。 

・何よりも、手軽に測定できることが長所である。

・ポイントは、トランジスタはダイオード2個と同じということ。テスタの黒棒(−)には電気的に(+)、赤棒(+)には電気的に(−)が来ている。 

・導通試験は次のようにやる。これはNPNの場合であり、PNPの場合は逆になる。

|LEFT:エミッタ、コレクタを調べる|LEFT:エミッタに黒、コレクタに赤|LEFT:導通があってはいけない|
|~|LEFT:エミッタに赤、コレクタに黒|LEFT:導通がなければならない|
|LEFT:コレクタ、ベースを調べる|LEFT:コレクタに黒、ベースに赤|LEFT:導通があってはいけない|
|~|LEFT:コレクタに赤、ベースに黒|LEFT:導通がなければならない|
|LEFT:エミッタ、ベースを調べる|LEFT:エミッタに黒、ベースに赤|LEFT:導通があってはいけない|
|~|LEFT:エミッタに赤、ベースに黒|LEFT:導通があってはいけない|

・簡単なhSUB{FE};の測定は次のようにやる。これはNPNの場合であり、PNPの場合は逆になる。

 エミッタにテスターの赤、コレクタに黒をつなげる。指をちょっとなめてベースとコレクタに同時にさわる。そのとき、テスターが振れればOK。テスターのR×100レンジくらいにしておく。

**回路電圧の測定 [#q0876bb0]

・トランジスタを外さないで良否の判定を行うには、回路電圧の測定が便利である。 \

・この方法によれば、基板パターンを切ったりする手間をかけずに済む。


*トランジスタの実験例 [#wae278d5]

*トランジスタからICへ [#o3274b7e]

 トランジスタを配線が便利なように複数個まとめたものをトランジスタアレイ、パワートランジスタをまとめたものでパワートランジスタモジュールというものもある。このように複数のトランジスタをまとめていくと、ICになっていく。


*参考文献 [#n9fefcfb]

-『実験で学ぶ最新トランジスタ・アンプ設計法』 
-『たのしくできるやさしいアナログ回路の実験』 
-『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 電子』 
-『ペンローズのねじれた四次元』 
-『新版 絵で見るエレクトロニクスのABC オーディオ・ラジオ・テレビ編』 
-『ズバリ出る4級アマチュア無線問題集 '92〜'93』 
-『はじめて学ぶ手ほどきデジタル回路』 
-『初級アマチュア無線 問題と解説』 
-『第3級ハム国試 要点マスター』 
-『まるごと覚える4級アマチュア無線 ポイントレッスン』 
-『図解・わかる電子回路』 
-『図解雑学 電子回路』 
-『はじめてのテスター』